木を活かした外壁仕上げと法規制
天然の木材の質感を生かしたデザインは非常に人気があります。一方で、防火の法規制から木材をそのまま使用することが難しいケースもあります。
この記事では、法規制をクリアして実現した木仕上げ外壁の事例をご紹介します。
市街化区域の多くは準防火地域や防火地域等、地域ごとに防火の規制があります。
都市部の住宅はほとんどの場合、こうした防火規制のあるエリアに立地するので、何らかの防火対策を施す必要があります。
2階建ての木造住宅の場合、隣地境界線に近い「延焼の恐れのある部分」にある外壁は防火構造や準耐火構造、耐火構造のいずれかとすることが多くのケースで求められます。
こうした耐火性能のある外壁が必要とされる場合、木材は可燃性の高い素材であるため、そのまま使用することは出来ません。
ただし、耐火性能を確保した外壁の上に「化粧材」として木材を使用することは認められています。市街地で木材で仕上げられた壁面とする場合、こうした方法が多く取られています。
当事務所においても木の「化粧材」による外壁は、様々なプロジェクトで採用しています。
「府中エコ・コートハウス」の中庭部分の外壁。国産杉板の無節材を使用しています。
こちらは工事中の写真。グレーの外壁面に木の横桟が打ってあるのがわかります。
この横桟の上に杉の化粧材を張ってゆきます。下地となるグレー外壁面は吹付け塗装で仕上げてあります。そのため、防火性、耐久性は通常の外壁面と同様に確保されています。
将来的に木材が傷んだ場合は撤去して通常の外壁に戻すことも可能です。
木の外壁は風雨にさらされる為、段々と経年劣化により風化して雨水のシミが出たりグレイっぽく退色してゆきますが、それもひとつの風合いとして味わいのある感じになります。
木という素材は皮革製品と同じで、年を経ても味わいが出るところに魅力があります。そのかわり、数年に一度は保護塗装を施す必要が出てきますが、風合いのある質感は他に代えがたい素材であるといえます。
こちらは「奥沢エコ・コートハウス」の外観。出窓や1階の壁面に木材で仕上げています。この住宅ではレッドシダーを使用しており、塗装も濃い目のブラウンを使用しているので、また異なる風合いを創り出しています。
こちらは「阿佐ヶ谷ライト・エコハウス」の玄関廻り。この住宅は3階建ての準耐火建築物になりますが、準耐火仕様をクリアした壁面に木の化粧板を張っています。玄関ドアは耐火性能と断熱性能を満たした既製品のドアです。木の化粧板の色調を扉に合わせているので、一体的に見えています。
木の化粧板は、有機的な質感の風合いがあり、外装の場合は人のスケールに近い部分や意匠的なポイントとなる部分に使用するとより効果的と考えられます。
コストやメンテナンスに対する配慮が必要ですが、他に代えがたい、魅力的な素材といえます。
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