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​エコのコスト
 

ここでは延床面積約90㎡、予算3000万円程度の新築戸建て住宅をサンプルとして、エコ仕様のコストについて解説します。

 

まず、工事費の中での各工事の割合をグラフ化すると下表のようになります。

coststudy.jpg

※経費、保険、消費税等は含んでいません。

※工事費の割合は当事務所の実績に基づいた目安であり、計画内容により異なります。

上表のグリーン部分がエコ仕様で増額となるコストになります。これらは全体のおよそ10-15%程度の割合となり、3000万円の住宅の場合は300万円~450万円程度がエコ仕様による増額になります。

これらは主に高気密・高断熱仕様として躯体の基本性能を上げる為のコストで、HEAT20G2グレードを想定しています。

このグレードより高い断熱グレードにする場合や天然由来のエコ素材をより多く使用する場合、オプションとなる設備機器(太陽光発電やストーブ等)を導入した場合は更にコストが必要になります。

​またエコ仕様のコストの中で特に大きいのが断熱サッシのコストですが、一般的に普及品のアルミサッシの3倍程度はかかります。サッシ=ガラス窓からの熱損失は他の部位に比べて大きいため、サッシの性能や窓の大きさ、位置を慎重に検討してコスト・バランスを考慮して計画することが重要です。近年はエコ意識の高まりも踏まえてサッシメーカー各社がより高性能な断熱サッシを開発しており、選択肢もより増えてゆくことが想定されます。

断熱材は高性能グラスウールを使用することが一般的です。グラスウールは相対的に安価で、高気密・高断熱仕様に対応した製品も色々開発されています。その他の断熱材としてはセルローズファイバー(紙繊維系)、羊毛や木繊維系といった有機素材による断熱材もあります。断熱材のコストの差はこうした素材の種類の違いや使用する厚みにより異なります。断熱材は希望する性能や長短所を考慮して決定する必要があります。

換気設備は、給気と排気を同時にコントロールする方式(第1種換気といいます)で、室内での熱エネルギーの損失が無い熱交換タイプが高気密・高断熱仕様においては一般的です。こうした機器では壁面取付方式やダクト方式等があります。ダクト方式はより確実に給排気をコントロールでき安定的な温熱環境をつくることが出来ますが、天井裏や壁面に十分なスペースを確保する必要があります。

アイテムごとの概算コストをまとめると下表のようになります。

coststudy4.jpg

※延床面積約100㎡、工事費3000万円程度の新築住宅での概算になります。

※当事務所の実績に基づいた目安であり、計画内容や工事条件により異なります。

上表のうちピンクで記載した部分がベースで必須の仕様となり、グリーンおよびイエローの部分が選択可能なオプションになります。

私共の設計では、躯体の基本性能向上に重きを置いており、電気・ガス設備による省エネ・創エネのテクノロジーは副次的なものと考えています。

​これは、建物が消費するエネルギーを根本的に抑制しないと優れた設備機器を使用しても効果的でない為ですが、設備機器は10~15年程度で更新の必要が出てくる為、設備機器に頼りすぎずにエコ性能を高めることが重要です。

また仕上材のエコ仕様はコスト上可能な限り取り入れるようにしています。近年はシックハウスに配慮された建材を増えていますが、天然由来の建材は健康上の安全・安心の確保のみならず、質感や風合い、経年変化の味わいを楽しむことが出来ます。

​総じて、個々のエコ仕様は工事費の中で大きな割合にはなりませんが、予算の配分によりバランスを考慮しながら必要なものを取捨選択することが重要です。

 

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