都市型二世帯住宅の水廻り
都市部の二世帯住宅の場合、限られた面積の中に二世帯分の諸室・機能を入れ込まなければならない場合が多くあります。
特に、トイレ・浴室等の水廻りは、使い勝手とコンパクトな寸法のバランスに配慮する必要性が出てくるケースが多くあります。
この記事では、そうした都市型の二世帯住宅の水廻りでのプランニング上の工夫について、ご紹介したいと思います。
二世帯住宅では、お二人もしくは単身の場合が多い、親御様世帯の方が面積を小さく計画するケースが多いのですが、そうしたケースについて、具体的な事例をもとに親御様世帯におけるコンパクトな水廻りのプランニングについて解説したいと思います。
「桜丘UM邸」は、玄関を共用とし内部で世帯ごとにゾーン分けをした二世帯住宅です。
親御様世帯は1LDKの間取りで、約50平米の面積で計画しました。
水廻りは約3畳分のスペースとし、間口1.8m、奥行き2.7mのサイズに、トイレ、シャワーユニットを並列させて配置しています。
通常、トイレと洗面のついたユニットバスであれば2畳弱のスペースで足りますが、トイレ併設のユニットバスは使い勝手や快適性が高いとは言えないため、洗面・トイレスペースとシャワーユニットを分離し、それぞれの動作スペースに寸法的な余裕を持たせています。
こちらが平面図。洗面・トイレを並列させ、奥にシャワーユニットを設けています。
洗面、トイレのインテリア。床と壁は防汚性の高いタイルを使用しています。
壁のタイルは調湿性能のあるタイプを使っています。
トイレ、洗面の上部には頭がぶつからないように配慮しながら、収納を設けています。
壁面にはタオルウォーマーを設け、湿気がこもらないようにしています。
洗面スペースとシャワーユニットの床面は、ほぼ同じ高さにそろうように調整しており、大きな段差が出ないように工夫しています。
シャワーユニットは、座って使用できるタイプを使用しています。
鏡の脇のユニットから温水がスプレー状に吹き出して、体を温めるタイプです。
このタイプのシャワーユニットは、残念ながら現在は廃番になっていますが、ご高齢の方の使用を想定したコンパクトなシャワーユニットになります。
総じて、「桜丘UM邸」の水廻りは、コンパクトながらもシンプルなプランとすることで、使いやすさに配慮して計画しています。
「奥沢エコ・コートハウス」も、玄関を共用とし内部で世帯ごとにゾーン分けをした二世帯住宅ですが、水廻りは更にコンパクトなプランニングとしています。
この住宅では、親御様世帯の居住スペースは24平米程度の面積となります。
水廻りは、L字状の平面にコンパクトに納まるように計画しました。
この住宅の場合、単身での住まい方を想定しているため、水廻りは必要最小限の広さと設備にしています。
トイレ部分は幅を収納と合わせることで、居室側に余計な凹凸が出ないように設計しています。
通常のトイレからするとやや狭いスペースなのですが、使用者の動作範囲は洗面台脇の幅が広い部分にかかっているため、使用に大きな問題はありません。
洗面台廻りの写真。
洗面台は円形のミニマムサイズのものを使用して、扉やトイレと干渉しないようにしています。写真右側にトイレがあります。
こちらはシャワーユニットの写真。
工事中の写真ですが、中のサイズ感はわかるかと思います。半畳ほどのコンパクトな大きさです。
こちらの水廻りはトータルで2畳弱くらいになります。
かなりコンパクトなサイズですが、居室や動線部分と分離された寝室の奥側に配置されており、単身者が落ち着いて使用できるような水廻りにしています。
以上、2軒の二世帯住宅の親御様世帯での水廻りをご紹介しました。
ちなみに、双方とも子世帯に大きな浴室のある水廻りがあり、そちらを補完的に併用することを想定しています。
完全独立型でない二世帯住宅の場合は、ある機能をシェアすることも想定して、全体の合理性、使い勝手を高めることが重要といえます。
「桜丘UM邸」ではシンプルで機能的な水廻り、「奥沢エコ・コートハウス」ではミニマムなスペースの中にアレンジされた水廻りとなっていますが、共通するのはスペースをコンパクトに無駄なく使用するプランニングになります。
コンパクトに組み合わせるプランニング上の配慮は、二世帯住宅に限らず、都市型住宅の基本となりますが、時には常識的なセオリーから外れて、平面のみならず断面的な寸法関係も考慮に入れ、上手く組み合わせてゆくことが重要といえます。
KHアーキテクツでは、限られた敷地の中にコンパクトながら快適な住環境のある都市型住宅を多く設計しております。
もしご興味ございましたら、お気軽にお問合せください。
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