住宅の設計料の内訳とは?


一般的に、設計事務所がお施主様からいただく住宅の設計監理料は、総工費の10%前半程度に設定されていることが多く、金額としては200万から400万円前後にのぼります。

他の仕事と比較しても、きわめて高額な金額をお支払いいただくことになるのですが、設計監理料とは何に対価を支払う払っていただいているのか、内訳を簡単にご説明したいと思います。



まず結論からすると、設計料の内訳は作業にともなう「労務費」と家賃、交通費、印刷代等の「諸経費」がほとんどになります。


設計事務所の報酬には、法的な拘束力のある報酬体系はありませんが、「H31年国土交通省告示98号」において業務報酬の基準が定められています。

これはあくまでも目安としての基準で、法的な拘束力は無いのですが、設計監理業務の見積において、算定根拠となる指標のひとつとなります。


「告示98号」には、「実費加算方法」と「略算方法」の2種類の計算方法が提示されていますが、ここでは、より簡潔な「略算方法」を参照して、住宅設計の報酬を試算してみます。


告示98号の略算方法によると、報酬目安は下記の式によります。



報酬目安 = 業務量 x 人件費単価 x 2.1 + 特別経費 + 技術料等経費 + 消費税相当



各項目のうち、「業務量」については告示98号に記載されている表において、参考となる時間量が建物用途と規模に応じて規定されています。


その他の項目の単価や経費は、それぞれの設計事務所で独自の金額が設定可能となっています。単価や経費は事務所の規模や属性によって大きく異なりますので、同じ式を使っても価格差は生じることになります。

また、「特別経費」とは「建築主の特別の依頼に基づいて必要となる経費」、「技術料等経費」とは「建築士事務所の想像力の対価となる経費」となっており、いずれも特殊な設計をする場合に加算される経費と考えられます。

通常の設計では「特別経費」や「技術料等経費」は発生しないと考えられますので、計算式の中の「業務量 x 人件費単価 x 2.1」の部分が経費を含んだ報酬目安の主要な項目といえます。


つまり、業務量と人件費単価がわかれば、おおよその設計監理料を算出することが出来ます。

まず、業務量についてですが、仮に100㎡の戸建住宅の設計監理とした場合、業務量は告示98号に記載されている、下記の表が基準となります。


下表の赤枠で囲った部分が、100㎡の住宅にかかる「人・時間」の業務量になります。



出典:建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準について

業務報酬基準検討委員会 編、国土交通省 



設計事務所が住宅を設計する場合、1軒づつオリジナルの一品生産になるため、別表第13の「詳細設計および構造計算を必要とするもの」もしくは別表14の「詳細設計を必要とするもの」が該当するものと考えられます。


この表の人・時間の数値から、総合、構造、設備という各設計の業務量を合計すると、「詳細設計および構造計算を必要とするもの」で1208人・時間、「詳細設計を必要とするもの」で789人・時間になります。

これを単純化して、1208と789の間を取って、1000人・時間としてみます。


これに、人件費単価をかける訳ですが、こちらも任意の単価が設定可能なので、仮定の単価として、日本の正社員の平均時給といわれる「1,900円」(インターネットの検索情報なので、参考までの金額になります)をあてはめてみると、下記のようになります。



業務量1,000時間 x 人件費単価1,900円 x 2.1


= 3,990,000 +( 消費税相当10%)


= ¥3,990,000 + ¥399,000 = ¥4,389,000  が設計監理料となります。



上記が告示98号の略算方法に準じた場合の100㎡の住宅を設計監理する場合のおおまかな報酬目安となります。


数式の時間の設定や人件費単価、間接経費のための2.1という掛率といった数値が妥当か、という問題はありますが、注文住宅の設計に約1,000時間程度の時間をかけているということは、仮に1日8時間労働とすると、1,000時間ですと125日間働いていることになります。

これは、ふだん私達が働いている時間の肌感覚として、合っている感じがします。



要は、そのくらいの時間を要して、デザインを考え、図面を書き、施工者に設計の意図を伝えているのが設計事務所の業務であり、そうした作業に対して設計監理料をお支払いいただいている、ということになります。

ちなみに、時間をかければかけるほど、デザインが良くなっていく傾向がありますので、丁寧につくって凝った設計をする事務所は長時間労働かつ赤字気味になってゆくという傾向があります。



そして実は、告示98号に準じると、工事費に対する料率で算定するよりも設計料が高めに算出される傾向にあるため、住宅の設計業務において実際に設計の見積で使用することはあまりありません。

例えば、100㎡(約30坪)の住宅を3000万円の工事予算で建てることを計画した場合、設計料率を12%とすると、360万円になり、上記の告示の試算よりも安くなります。設計料の相場感としてはこちらの方が実情に近いと思いますが、料率の設定も個々の設計事務所で異なりますので、設計料がどのような設定になっているかはご依頼される前に確認する必要があります。


告示98号の計算式は、実勢より高めに算出される傾向がありますが、設計事務所が様々な建物を設計するにあたって、どのくらい業務量があるのかを客観的な指標として提示している点で非常にわかりやすく有効かと思います。


ちなみに、別表第15は「その他の住宅」となっていますが、規格化・大量生産を前提としたハウスメーカーさんの住宅や建売住宅の設計を想定したものと思われます。「その他の住宅」の業務量は合計390時間ですが、「詳細設計および構造計算を必要とするもの」や「詳細設計を必要とするもの」の戸建住宅に較べると1/2から1/3程度の業務量の差があることがわかります。


要は、標準化・規格化された設計でない場合は相応の時間がかかり、それが設計料の価格差に現れるということになります。



その代わり、一品生産でひとつづつ丁寧に仕事をするのが設計事務所といえますので、その点をご理解いただき、ご納得の上でご契約いただければと思います。







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