付加断熱の基礎知識


一般的に「付加断熱」とは、断熱の弱い部分(熱橋部分)をカバーして外皮全体がまんべんなく断熱されるように、補助的に付け足した断熱材とその工法を意味します。


「付加断熱」は日本の標準的な住宅ではほとんど採用されないのですが、高気密高断熱住宅としたい場合に、断熱性能を高める上で重要な部位として適用されています。


ただ、一般的にもあまり知られていない部位になりますので、この記事では、「付加断熱」の概要と設計上のポイントについて、ご説明したいと思います。




まず付加断熱とはどういった部位を指すか、図面と写真をご覧ください。




下図は、「府中エコ・コートハウス」の窓廻りの詳細図です、

この詳細図の中の、グリーンのハッチ部分が「付加断熱」の部位になります。



構造体となる柱・梁の外側の壁面に張る形になります。

このプロジェクトでは「フェノールフォーム系断熱ボード 25ミリ」を使用しています。


こちらの写真は、付加断熱のボードの施工を完了した段階での壁面を撮ったものです。表面に保護シートが貼ってあるので、材質がわかりにくいのですが、写真右下に立てかけてある厚みのあるボード状のものが「フェノールフォーム系断熱ボード (商品名:フェノバボード)」になります。非常に密でソリッドな発泡材のような感じです。




付加断熱の材質と厚みは、実現したい断熱グレードの設定によって決定されます。

断熱グレードを高性能に設定すると、必要な付加断熱の厚さもより厚くなります。

そうすると、壁の厚さもかなり分厚くなってきます。


例えば、寒冷地におけるハイグレードな高気密高断熱住宅となると、付加断熱が10センチ以上必要となり、壁厚30センチ内外になることもあります。

一般的な木造住宅ですと、壁厚15センチ強くらいが標準的な壁厚になるので、その倍くらいの厚みになります。

東京のような敷地が相対的に狭く、法規制の厳しいケースが多い都市部において、壁厚30センチにすると居住スペースをかなりロスすることになりかねない為、必要な面積や間取りと、実現したい断熱グレードとその場合の壁厚について、十分に比較検討する必要があります。


当事務所でよく採用しているHEAT20G2グレードは、高気密高断熱住宅のグレードとしてはエントリーグレードと思われますが、上記の「府中エコ・コートハウス」も温暖地域の都市部の住宅であることを勘案し、HEAT20G2グレードとして断熱材を選定しています。

この場合、壁厚が25ミリ程度増えるだけなので、見え掛かり上は普通の住宅とあまり変わらず、壁厚に増加による居住スペースのロスもあまり感じられません。

そうした点もあって、温暖地域に区分される敷地においては、HEAT20G2グレードをよく採用しています。



また、付加断熱に限らず断熱材は竣工後に見た目でわからないものの、性能に大きく関わってくる重要な部位といえます。

付加断熱の選定は、施工性や耐水性、法規上の防火性能も考慮する必要があるため、お施主様のご希望のみでは決定しにくいところがあります。


例えば、法規制から防火構造や準耐火、耐火構造の外壁とする必要がある場合、個々の製品で取得されている耐火仕様の個別認定は適用できませんが、耐火仕様として認められている告示仕様とすることで耐火仕様をクリアすることが出来ます。

「府中エコ・コートハウス」の場合、「国土交通省H12告示1359号」の仕様を適用することで、防火構造の法的な仕様をクリアしています。


断熱グレードや断熱材の種類の選定については、性能面はもとより技術的、法規制上の問題を解決する必要があるため、基本的な要望を建築家に伝えた上で、法的、技術的な条件を十分に検討した上で決定するプロセスを踏まえるのが妥当といえるかと思います。


いずれにしても、デザインと性能の全体を俯瞰した上でバランスを検討し、仕様を決定するのが重要といえます。







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