二世帯住宅のバリエーション

土地代が高く、敷地の面積も限定されがちな都市部において、二世帯住宅は資金を世代間で融通でき、土地の有効活用も出来るため、新築戸建て住宅において人気のある選択肢のひとつと言えます。

このコラムではKHアーキテクツが手がけた二世帯住宅の事例におけるバリエーションをご紹介します。



二世帯住宅にはおおよそ下記の4パターンが考えられます。



・A 玄関や水廻りを共有し、生活ゾーンのみを分けるパターン。


・B 玄関のみ共有し、生活ゾーンや水廻りは分離しているパターン。


・C 玄関を個別に設け、二世帯の何処かに出入り口があり往来ができるパターン。


・D 玄関を個別に設け、二世帯間で往来ができず個々に分離独立したパターン。



Aパターンが最も共有の度合いが高く、Dパターンになるに従って各世帯の独立性が高くなります。また、Dパターンのように各世帯が独立している場合は建築基準法上は「長屋」という扱いになります。

「長屋」となった場合、戸建て住宅と較べて多少法規制が厳しくなります。例えば東京都では東京都安全条例において、玄関以外の窓から道路まで有効幅50cmの避難経路を確保することが義務付けられます。計画段階においてこうした「長屋」で必要となる法規制に対して留意する必要があります。


各世帯の独立性の度合いは、家族の構成人数や経済的な共有のあり方、生活スタイル等に大きく左右されます。


将来的な同居を想定した場合や、親御様に日常生活に一定の介護・補助が必要とされる場合は、同居に近い「Aパターン」が採用されることが多いです。

親御様の世帯がお一人で生活されている場合や、勤労生活から引退されて収入源が年金等で限られた範囲で生活されている場合は、「Bパターン」「Cパターン」のように規模の小さな独立したエリアをつくって生活されているパターンが多いです。この場合は子世帯が主、親世帯が従となるようなプランとなる傾向にあります。

親御様の世帯がまだ現役で働いており、一定程度の収入が当面見込まれる場合は、「Dパターン」のような完全分離の二世帯住宅が多くなります。


上記のような二世帯住宅のパターンと特徴から、二世帯住宅を検討される場合は、下記のような点をあらかじめ協議しておく必要があります。



・介護の要否や、日常生活の関与の割合

・必要な生活スペースとその割合

・光熱費や生活費等の負担割合

・建設費の負担割合

・中長期的な日常生活に対するビジョンやイメージ



最後に掲げた中長期的な生活のイメージというのはなかなか想像しにくい点もありますが、生活に介護が必要となる可能性は誰しも捨てきれない点になりますので、計画段階において廊下の幅に余裕を持たせたり、主要な扉を引戸にする等の対策はとっておいた方がベターといえます。

また、将来的にどちらかの世帯スペースを賃貸住宅として貸す可能性の有無も検討しておくと、どのパターンが適切か、判断の指標になります。




ここからは、具体的な事例をご紹介します。




世田谷に立地する「奥沢エコ・コートハウス」は玄関のみ共有し、水廻りは個別に設けた「Bパターン」による二世帯住宅です。



1階平面図。ブラウン部分が親世帯のエリアになります。



2階平面図。すべて子世帯のエリアになります。


この住宅の場合、親世帯はお一人で使用する想定であった為、約24平米と比較的コンパクトにまとめられています。水廻りはキッチン、トイレ、洗面、シャワー室を備えており、一通り自律した生活が可能な間取りになっています。共用の玄関から廊下を通って直接アクセス出来るので、独立性は比較的高くなっています。






桜丘UM邸」においても、玄関と廊下部分を共有し、水廻りは個別に設けた「Bパターン」で設計されています。

都内によくある、不整形で奥行きの長い敷地に建てられているため、道路側から見ると非常に小さな住宅に見えますが、実際には22m程度の奥行きがあります。

1階平面図

ポーチから玄関に入ると階段ホールになります。


2階平面図

ブラウンの部分が親世帯のエリアになります。こちらも水廻りはキッチン、トイレ、洗面、シャワー室を備えており、一通り自律した生活が可能な間取りになっています。

親世帯エリアは二人住まいを想定しており、50㎡程度の面積になります。






府中エコ・コートハウス」は、二世帯はそれぞれ完全に分離独立した、「Dパターン」の長屋形式の住宅としています。

一般的に「重層長屋」と言われる、1階と2階で住戸が分かれている形式の長屋になります。


こちらの住宅も間口より奥行がかなり深い敷地に建っています。

写真左側の黒い扉が2階への入り口になっています。


1階(親世帯エリア)

間取りとしては2LDK、面積は80㎡程度あります。一般的なファミリー向けの住戸として使用可能な規模、仕様になっています。


2階(子世帯エリア)

間取りとしては3LDK、面積は90㎡程度としています。1階と2階は動線的に完全に分離されていますが、中庭を介して緩やかにつながりを感じられるプランになっています。





以上、二世帯住宅のバリエーションについて、事例をもとに解説してみました。


その他の住宅事例においても、親御様との同居や他世帯を想定した住宅もあります。

総じて、中長期的に家族構成は変化してゆきます。その変化を見据えつつ、予期しない変化も許容できるような住まいが今後更に求められてゆくものと思います。





二世帯住宅をご検討の際には、KHアーキテクツへお気軽にご相談ください。






・関連プロジェクト