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​お客様の声  T.K 様、A.K 様   (みどりのK邸) 

​座談会:「住まい」のイメージが全く異なる夫婦の家づくり


この座談会の記録は、創造系不動産 高橋寿太郎 さん  著、「建築と不動産のあいだ」所収のものです。
KHアーキテクツと創造系不動産が土地探しから協働してお客様をサポートした「みどりのK邸」のお施主様ご夫妻と創造系不動産・高橋さん、林による対談となっています。
土地探しから始まるプロジェクト全体のフローは、創造系不動産の提唱する「建築不動産フロー」に準じています。


 

​参加者

建主(ご主人と奥様)

創造系不動産 高橋 寿太郎

KHアーキテクツ 林 謙太郎

マンション派の夫と戸建て派の妻

 

高橋: 「竣工後1年が経ちますが、こちらでの暮らしごこちはいかがですか?」

ご主人:「『らせん型』に空気がゆったり連続する空間が本当に気に入っていて、想像以上に良い家に満足しています。」

奥さん:「当初は夫婦の意見がはっきり分かれていたので、林さんにはそれらをまとめていただいて、とても感謝しています。」

ご主人:「そもそも、私は分譲マンションを買いたかったのですが、妻が一戸建て派だったのです。」

林:  「ぜんぜん知らなかった(笑)」

ご主人:「当時38歳、結婚したばかりでしたが、ローンを組むならそろそろかなと。ただ一戸建ては高価だから無理だろうと思っていました。だからマンションを買おうと考えて、妻に相談したんです。」

奥さん:「私は田舎の出身なので、たくさんの人が近い距離感で住むマンションが不安でした。画一的なデザインの印象もあって、私は個性的な家が良かったので一戸建てが良いって!」

ご主人:「私は横浜の普通のマンションで育ったので、『画一的の何が悪いんだ』って言い返しました。それに気持ち的にも大きな借金はしたくなかった。」

奥さん:「このままではマンションに住むことになってしまうと、急いでネットで一戸建てや土地を検索しました。すると東京でなければ結構あるんです。」

ご主人:「どうだ!と土地を見つけてくるその熱意に負けて、じっくり物件情報を見てみると、確かに私たちでも手が届く範囲で土地がある。」

建築家かハウスメーカーか?

ご主人:「でも土地はありそうだとして、『個性的なデザイン』と妻は言いますが、やっぱり家は大手ハウスメーカーでないと、建物の保証はどうなるのか、と心配しました。私が企業の営業職だからそう考えてしまうのかもしれませんが。それにハウスメーカーの方がコスト的なメリットがあるはずだとも考えたんです。総合するとハウスメーカーが良い、そこは譲れない!と主張しました。」

奥さん:「私も正直、その辺りは分からないので、大手設計事務所に勤める建築士の友人に夫婦で話を聞きに行きました。すると、ちゃんとした建築家と工務店を選べば大丈夫だと。一緒に家づくりをする感じは、ハウスメーカーより建築家との方が面白いんじゃないか、と言われました。」

高橋: 「奥さんは、京都で工芸を学ぶクリエイターですから、デザイン的なものはもちろん譲れないんでしょうね。一方、ご主人は大手企業の営業職でいらっしゃるから、保証や、コスト、安全性に思いが巡って当然です。わかります。」

ご主人:「会社の同僚も同じ意見です。家を買おうという点だけは夫婦で一致していますが、あとは全部バラバラ。妻は盛り上がるけど、ちょっと落ち着いた方が良いんじゃないかと。」

林:  「私はアトリエ事務所も大手の設計事務所も両方経験してから建築家として独立したので分かりますが、住宅をつくり込む仕事は個人の設計事務所や建築家が良いでしょうね。」

保証、コスト、安全性が気になる!

ご主人:「それでも、保証やコストの面ではハウスメーカーが良いだろうと。積水ハウスや住友林業、タマホームなんかもネットで調べて、住宅展示場にも足を運びました。営業の方とお話ししながら、何が違うんだろうと考えました。またある中堅の工務店さんは、まだ依頼していないのに見積もりまでつくって家に来られ、ぐいぐい決断を迫られました(笑)。そんなことをしていると、何だか家づくりが分からなくなって、林さんのお話しを聞いてみたくなったんです。」

林:  「確か最初はスカイプで、お話ししましたね。」

ご主人:「林さんは私たちに建築家との家づくりを、メリットデメリットも含め丁寧に説明してくれました。もともと友人の紹介ですから、信用していましたが話しているうちに、さらに信頼感が増してお願いすることにしました。

高橋: 「最初の段階で苦労されたんですね。建築家が知り合いにいる人が少ないですからね。」

建築家と不動産コンサルの二人三脚

ご主人:「林さん、高橋さんとは本当にたくさんの土地を見ました。林さんがそれぞれの土地にどんな建物が建つか、全てその場で説明してくださったのも、高橋さんにファイナンスのことを色々と教えてもらえたのもありがたかったです。建築不動産フローの2番目にある、ファイナンスフェーズですよね。ああいう話は聞いたことがなかったです。単に今のお金だけじゃなくて、将来の具体的なお金や貯金から逆算してくるような予算設定をされていました。」

高橋: 「ローンを返すのは当然ですが、その後の預貯金の方が大事です。自分たちを過大評価してもいけないし、過小評価してもいけません。まずは将来像を具体的に数字にも落としてみます。その目標をどういう方法でどういうロジックで考えるべきかを、お教えしました。

ご主人:「おかげで家と土地とお金が、私たちの中で一本の軸で結ばれました。私はやたらコストを心配していましたが、それは将来を含めたお金の全体像を「知らなかった」からだとようやく分かったんです。土地の契約前には、営業マンに買わされるのではなく、自分たちでつくっていくんだ、としっかり思えていました。」

「小さな畑」を見込んだ土地探しと設計

奥さん:「この土地は最初に私が小声で言った『家庭菜園』の大きさを見込んで、探してくださったそうですね。」

林:  「家が建つだけの土地面積ではダメで、さらに家庭菜園というか『小さな畑』の面積も含んで候補に挙がった全ての土地の広さをチェックしました。高橋さんが土地を調べるのですが、そういう視点で私もチェックしています。結果的に60坪程度のものを選びましたから、ゆとりはあります。さらに、駐車場をビルトイン型にしています。」

高橋: 「どういうことですか?」

林:  「ビルトイン型の駐車場は、郊外でゆとりのある区画では普通採用しません。でもこの住宅は、畑の面積をできるだけ広くとるためにあえてこの型にしました。その分、半階上げて、室内空間をらせん型に連続させています。実は「らせん空間」と「駐車場」と「畑」と「土地選び」が全て連動しています。」

家を閉じるか開くか

林:  「デザインフェーズでは再び夫婦で意見の対立がありましたね。『家を開くか閉じるか問題』です。」

ご主人:「妻は、隣の家の人がすーっと入ってこられる土間のような、開いた空間が欲しいと言いましたが、私は『泥棒が入ったらどうするんだ、土間なんかいらない』と。」

高橋: 「林さんは建築的にどう解決しようと思ったんですか?」

林:  「解決するというより、ご夫婦の意見の違いは、突き詰めていくとそれほど違わないんじゃないかなと思っていました。結局、玄関前の空間は開かれた感じでもありながら、懸念された防犯面もきっちり閉じているでしょう。」

奥さん:「確かに、主人もここでくつろいでいます。」

銀行とのコミュニケーション

ご主人:「ところで、以前、高橋さんに愚痴ったことがありますが、ローンを組んだ銀行って所は家づくりを分かってないんですよね。

建物の費用を3回に分けて支払うので、土地・建物1・建物2・建物3と分けて融資されました。建物2の時だけ、私ひとりで行ったのですが、前回の担当者と違っていて話は通じないし、保証料の計算は間違えているしで不安になりました。」

高橋: 「それを聞いて、次はまた同行するようにしました。慣れていない担当者だったんでしょうね。確かに、銀行の方は建築現場を見て手続きしているわけではありませんから、こちらの家づくりの状況や気持ちは伝わりにくいです。」

林:    「不動産屋さんが建築中に融資のサポートをしてくれることはないんですか?」

高橋 「あると思いますが、少ないです。建築家との家づくりで、設計フェーズや施工フェーズでも、銀行ローンをバックアップしてくれる不動産仲介が、もっと必要だろうと思います。」

建築不動産フローを体験して

ご主人:「確かに、建築不動産フローの土地・設計・施工の部分で、創造系不動産と林さん、工務店さんは、すごく連携していました。初めはそこが心配で、ハウスメーカーが良いのではと考えていたのですが、フローが実行されるのを見て、心配は吹っ飛びました。」

奥さん:「主人は心配性ですから。私は菜園とこのらせん型の木の空間にすごく満足です。」

ご主人:「私も満足ですよ。外観はキュッとコンパクトな家なのに、室内はゆったり大きな空間があって。当初は会社の同僚に相談したものです。『やっぱり家づくりは大手や保証だよな、この考え方は間違ってないよな』と。すると同僚5人中5人が『間違ってないよ』と(笑)。

​でもいま逆に遊びに来た友人から、同じ質問をされます。私は、『まあ、それだけではないよ』と素直に答えています。消費者保護の制度も整いつつあるようですし、私たちのような方法も含め、可能性を拡げて、家づくりに挑戦してほしいです。」

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